オンライン展覧会「ひかりを手に入れる」中井絵津子インタビュー
2020年 05月 11日
2年ほど前から”ひかり”に寄り添う作品作りをしているという中井さんに”ひかり”についての記憶や今回の”ヒカリシリーズ”でのコラージュ制作のことなど伺いました。
↑”ヒカリシリーズ”の一つ「ヒカリ〜揺れるように」 ●記憶に残る”ひかり”について 学生の頃、1年以上、自宅療養していた時期がありました。 毎朝、目覚めて目に入るのはベッドから見る天井でした。 変化のない白い天井をほぼ1日中見つめていましたが、 朝は窓から入る光が作る、庭の木々の葉の影が映りました。 同じ葉の影を見る事で、毎朝、世界が今日も始まり 動いている事を確認していたような気がします。 同じ影でもハチが停まったり、鳥がかすめ飛んだりと変化がありました。 焦りや絶望、不安で毎日泣いていた日々でしたが 朝のそのひと時で「生きている」ことを確認していたんだなあと思います。
体調が徐々に良くなり、働きにいくことが出来るようになったりして 旅先で見た海の輝きや、外国の街の夜景など 美しい光を何度も経験していますが あの辛い時期に、私を支えてくれた朝の光と影は 私の中で忘れられない景色です。
影があるから光を感じられる。 それは今の時世にも当てはまると思います。 このほぼ止まっているように見えた春が教えてくれたもの。 それはきっと人類に何か変化を与えてくれると思っています。
●作品に登場する人物についてのお話 ”ヒカリシリーズ”は3作品です。 その他の2作品「metsä」「地球照」には小さく人物が入っています。 
↑「metsä」
以前は人物を入れずに「人が居た気配」を表現できないか模索していた時期がありました。 人物を描くことで、そこに具体性が出てくるので、感情移入しにくい場合があるかも、と思っていたのです。観てくださる方が自分を投影しにくくなる、というか。 でも、あまりそんなことを気にするよりも、自分がそこに入り込める絵を描きたいと思うようになり、自分の代わりに小さく人物や生き物を入れるようになりました。 今も人物が大きくメインになる作品は少ないかもしれませんが、以前よりは増えました。 よく指摘されるのが、女の子よりも男の子を描いていること。男の子の方が自分を投影しやすい部分が多く、男の子(又は中性的な子)を描いていることが多いです。 ”ヒカリシリーズ”は人が内存しているヒカリを描いているので、人物は入っていません。
●銅版画とコラージュ技法について 版を2回、別の紙に刷って、切り抜いて貼り合わせる方法で”ヒカリシリーズ”は作っています。
イラストとしてコラージュは以前から作っていましたが、版画にも入れ始めたのは10年前頃からです。貼り合わせた部分だけ別の世界にしたい時や、色を載せたくないけれど白のままは寂しいなあとか、そういう場合にも使います。手法の一つとして作っています。 雁皮刷りという雁皮という和紙を使う刷り方がありますが、この技法が苦手だった私が、蔵前の「カキモリ」さんで見つけたマニラ紙に刷ってみたことから今のマニラ紙コラージュは始まりました。 ただコラージュ版画を始めたのは10年くらい前からですが、糊の強度がどのくらい保つのか判らない部分があり、これからの研究材料です。 
↑この作品は「Jeux interdits(禁じられた遊び)」2011年の作品です。(在庫なし) 初めてコラージュを試した作品。まだマニラ紙ではなく、クラフト紙の薄いもので刷っています。
オンライン展覧会「ひかりを手に入れる」 作品購入はショップから



by ruriro
| 2020-05-11 15:46
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